
歯根分離鉗子(分割鉗子)は、多根歯を抜歯する際に歯根を個別に分離・脱臼させるために設計された専用の器具です。 一般的な抜歯鉗子が歯冠部をしっかり把持して引き抜くことを目的としているのに対し、歯根分離鉗子は先端の嘴部が楔(くさび)形になっており、歯間部や分岐部に差し込んで脱臼力を加える構造が特徴です。
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つまり「把持」より「脱臼・分離」に特化した器具です。
歯科の現場では、抜歯鉗子と歯根分離鉗子を組み合わせて使用するケースが多く見られます。 まず歯根分離鉗子で対象の歯根を脱臼させ、その後に通常の抜歯鉗子で把持して取り出すという2ステップの流れが標準的な手順とされています。
器具の選定を誤ると手技が複雑になります。
鉗子の嘴部形態は上下顎・前歯臼歯で異なり、智歯専用・残根専用など複数の種類が存在します。 上顎智歯向けには第二大臼歯と智歯の歯間部に挿入しやすい細身の先端形状のものが使われ、下顎智歯では頬舌的な動きに対応した形状のものが選ばれます。
関連)https://www.tokyo-dentalshow.com/showdata/2007/35/20071012082400.pdf
抜歯に使用する鉗子は、大きく「上顎用」「下顎用」「智歯用」「残根用」に分類されます。 歯根分離鉗子もこの原則に従い、術者は患者の口腔内解剖と対象歯の根形態を事前に把握したうえで器具を選択する必要があります。
関連)https://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-31424.html
以下に主な種類と選択基準を整理します。
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関連)https://www.tokyo-dentalshow.com/showdata/2007/35/20071012082400.pdf
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器具の選択は根形態の確認から始まります。
術前のレントゲン読影で歯根の湾曲方向・根数・根尖形態を把握し、それに適した鉗子を選ぶことが手技精度の向上に直結します。 根尖が近心側に湾曲している智歯には脱臼鉗子が有効な場面もあります。 一方、単純な形態で遠心方向に傾いている歯根には、智歯抜去専用鉗子が威力を発揮します。
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分割抜歯(歯根分割抜去法)は、複数の歯根を持つ大臼歯において、問題のある歯根だけを分割・抜去して健全な歯根を残す術式です。 下顎大臼歯のような2根歯には「ヘミセクション」、上顎大臼歯のような3根歯には「トライセクション」と呼ばれます。
関連)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%AF%E6%A0%B9%E5%88%86%E5%89%B2%E6%8A%9C%E5%8E%BB%E6%B3%95
手順は次の流れで進めます。
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関連)https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/4870/1/119_129.pdf
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関連)https://www.mdo.jpn.com/blog/2023-05-30-2-wisdom-teeth-extraction/
力のかけ方が合併症を左右します。
鉗子を急に強く閉じると、一気に強い力がかかって歯根が破折するおそれがあります。 そのため、鉗子を徐々に閉じたり開いたりを繰り返しながら段階的に脱臼させることが推奨されています。 歯根膜腔に確実にヘーベルを挿入してから鉗子に移行する手順を守ると、無駄な力を省けます。
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また、歯冠分割の際は常に下顎舌側板の穿孔に注意が必要です。 分割する歯冠は「上開き形態」になるように切断し、視野が得られない舌側下方の隅角は切断しないという選択が安全です。
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歯根分割抜去法を選択するかどうかは、治療の難易度と患者の口腔状態を総合的に評価して決定します。 適応か否かを誤ると、術後トラブルの原因となります。
関連)https://mimatsu-wd.jp/faq/faq-basshi/basshi007/
以下の表に主な判断基準をまとめます。
| ✅ 適応症 | ❌ 非適応症・注意が必要なケース |
|---|---|
| 複数歯根のうち1本だけに病変が限局している場合 | 全歯根に病変が及んでいる場合 |
| 残存歯根の骨支持が十分にある場合 | 残存歯根の骨吸収が著しい場合 |
| 歯根感染・根破折が1根のみに限局 | 歯質崩壊が激しく歯根の把持が不能な場合 |
| ブリッジ・インプラント適応が困難な患者 | 全身疾患により侵襲的処置のリスクが高い場合 |
| 患者が歯の保存を強く希望している場合 | 根尖の近心側湾曲が強い智歯(分割鉗子の非適応) |
治療前の診査が成否を決めます。
歯根分割抜去法は健康保険でも認められており、広く実施されている術式です。 しかし、術後の予後は一概に良好とはいえず、「延命処置」として位置づける考え方もあります。 患者への十分なインフォームドコンセントが不可欠です。
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分割抜歯後はブリッジなどの補綴処置が必要になるケースがほとんどです。 さらに分割部位は歯垢が付着しやすく清掃困難になりやすいため、術後の口腔衛生管理の指導も重要な役割の一つです。
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歯根分離鉗子を用いた抜歯手技には、一般的な抜歯以上に固有のリスクが潜んでいます。 ここでは現場でよく遭遇するトラブルとその回避策を整理します。
🔴 歯根破折
歯根分離鉗子で急激な力を加えると歯根が途中で折れ、残根処置が必要になります。 特に軟化歯質が残っている場合は、力が正しく伝わらず破折リスクが高まります。 対策として、軟化歯質をラウンドバーやエキスカベータで事前に除去し、硬い歯質のみにしてから器具を適合させることが重要です。
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歯質の状態確認が最初の一歩です。
🔴 歯槽骨骨折・下顎舌側板の損傷
🔴 隣在歯への損傷
智歯の脱臼時に第二大臼歯と智歯の間に鉗子を挿入する際、誤った方向に力がかかると隣在歯を傷める可能性があります。 鉗子の先端形状を術前に確認し、嘴部が智歯の根面だけに接触するよう深く押し込んでから操作することが基本です。
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これは意外と見落とされやすいリスクです。
🔴 被覆歯肉による視野不足
歯肉が歯根を覆っている場合は、無理に器具を挿入しようとすると正確な操作ができません。 面倒でも、メス・電気メス・レーザーなどで被覆歯肉を切除して歯根膜腔を露出させてから操作することが精度向上と安全確保につながります。
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以下に合併症の予防ポイントをまとめます。
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関連)https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/4870/1/119_129.pdf
合併症の多くは予防できます。
分割鉗子の使用に関して参考になる実技動画として、歯科向けYouTubeチャンネルでも詳細な解説が公開されています。
歯科従事者向けの抜歯手技の詳細・器具一覧については、以下の専門書や信頼性の高い情報源が役立ちます。
抜歯手技に関する実践的な解説(器具の適応と操作手順):
「必ず上達抜歯手技 増補新版」(シーエム出版)サンプルページ
歯根分割抜去法の適応症・症例紹介:
歯根分割抜去法(分割抜歯)について(みまつ渡辺歯科医院)
抜歯鉗子の種類・特徴・メーカー情報:

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