浸潤麻酔が効いていれば、歯根膜内注射は必要ないと思っているあなた、下顎臼歯部では浸潤麻酔だけでは効かないケースが約3割あります。

歯根膜内注射とは、歯頚部から歯根膜(歯と歯槽骨の間にある薄い線維性組織)に局所麻酔薬を直接注入し、薬液を歯根尖まで到達させる麻酔方法です。 通常の浸潤麻酔が歯肉→歯槽骨→歯という経路をたどって効果が現れるのに対し、歯根膜内注射は歯根膜というルートを経由するため、骨を介さずに麻酔薬が歯の神経周囲に達します。
関連)https://fujid.jp/treatment-content/painless-treatment/
この方法は「PDL(Periodontal Ligament)注射」とも呼ばれ、30〜32Gという非常に細い注射針を使用します。 細い針を使うことで、歯根膜の狭いスペースにも針を挿入しやすくなります。これが基本です。
関連)https://www.oralstudio.net/dictionary/detail/6293
薬液が歯根膜の線維束の間を通り、毛細血管やリンパ管を介して迅速に根尖部へ移行するメカニズムが、他の麻酔法と異なる即効性の秘訣です。 骨の厚みを問わない点が、下顎臼歯部など骨密度の高い部位での特大の強みになります。
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歯根膜内注射が特に有用なのは、通常の浸潤麻酔や伝達麻酔では麻酔効果が不十分なケースです。 代表的な適応場面を整理します。
関連)https://www.bosch-kenpo.or.jp/shika/htmls/s0008.html
診断に際しては患者の全身状態・歯周組織の炎症の有無・処置内容の3つを必ず確認することが条件です。 急性炎症が強い部位への注射は、感染拡大のリスクがあるため慎重な判断が求められます。
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根管治療では通常の浸潤麻酔が効かないことで処置が中断するケースがあります。そうした場面で歯根膜内注射を補助的に用いることで、治療の継続率を高めることができます。
手順は大きく5ステップに分かれます。
最も重要なのはステップ4の注入速度です。 強圧で一気に薬液を押し込むと激しい疼痛が生じます。痛いですね。逆に、10〜15秒かけてゆっくり注入すれば不快感は最小化できます。
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電動麻酔器の活用もポイントです。 手動シリンジと比べて注入速度のコントロールが容易で、一定の低速で薬液を送り続けられます。若手歯科医師や研修中のスタッフにとっては特に心強いサポートツールになります。
関連)https://www.youtube.com/watch?v=0u3Y8-R6N60
この麻酔法には独自のリスクがあり、事前のチェックリストが重要です。
| リスク | 発生メカニズム | 対策 |
|---|---|---|
| 🦠 感染の根尖周囲への波及 | 汚染された歯周溝から針を挿入し菌を押し込む | 歯周組織の炎症・汚染がある部位への注射を避ける |
| 😣 注射中の疼痛 | 強圧での薬液注入で組織が膨張 | 低速・少量注入、電動麻酔器の使用 |
| 🦴 注射後の咬合痛(1〜2日) | 歯根膜への圧力と薬液刺激による炎症 | 患者に事前説明し、必要なら消炎鎮痛薬を処方 |
| 🩸 一過性の頻脈 | アドレナリン含有薬液が血管に直接接触 | 薬液の種類確認、注入後の全身状態観察 |
注射後1〜2日間、噛むと違和感・痛みが残ることがあります。 処置前に患者へ「翌日まで噛み合わせに違和感が出ることがある」と伝えておくだけでクレームを大幅に減らせます。これは必須のインフォームドコンセントです。
歯周組織が汚染されている患者への歯根膜内注射は原則禁忌と考えるべきです。 活動性の歯周炎がある場合は、先に歯周処置を行ってから麻酔を計画し直すことが、患者の健康を守る上での原則です。
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OralStudio歯科辞書「歯根膜内注射法」:注射針のゲージ・注意点・感染リスクの解説
歯根膜内注射は「いざという時の補助麻酔」として扱われることが多い手技です。意外ですね。しかし実際には、最初から歯根膜内注射を計画に組み込む「計画的PDL注射」の考え方が、一部の先進的な臨床家の間で広まっています。
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具体的には、下顎大臼歯に対して浸潤麻酔と伝達麻酔を行った後、効果確認を待たずに歯根膜内注射を加えるという3ステップ麻酔プロトコルです。 このアプローチにより、麻酔の効果発現を待つ時間(通常3〜5分)を短縮しながら、麻酔の確実性を高めることができます。
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電動麻酔器(例:Anaeject、STA)を使用した歯根膜内注射は、1〜2mL/分という一定速度での注入が自動制御されるため、術者の手技依存による疼痛のばらつきが大幅に減少します。 研修医や歯科衛生士がサポートとして関与する場面でも、再現性の高い麻酔が提供しやすくなります。これは使えそうです。
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また、プロピトカイン塩酸塩・フェリプレシン配合製剤(シタネスト-オクタプレシン)は、アドレナリン含有製剤が使用できない患者(甲状腺機能亢進症・虚血性心疾患など)への歯根膜内注射に有用です。 アドレナリン禁忌の患者でも歯根膜内注射が選択肢に入ることは、歯科臨床の幅を広げる重要な知識になります。
関連)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00058856.pdf
まる歯チャンネル(YouTube):表面麻酔→歯肉移行部→歯根膜への3ステップ浸潤麻酔の実践解説動画
日本医薬情報センター:プロピトカイン塩酸塩・フェリプレシン注射剤(シタネスト-オクタプレシン)の効能・用法の公式添付文書

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