35Gの針を使っても、注入速度が速すぎると33Gより患者が痛みを訴えるケースがあります。
注射針の太さを示す単位「G(ゲージ)」は、数字が大きくなるほど針が細くなる仕組みです。 これはバーミンガムワイヤーゲージ(BWG)という産業規格が起源で、もともとは鉄線の太さを表すために使われていたものが医療に転用されました。 直感と逆なので、初めて覚える際は混乱しやすい点です。
歯科で使われる主なゲージと外径の対応は以下の通りです。
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| ゲージ(G) | 外径(mm) | 主な用途 |
|---|---|---|
| 27G | 約0.40mm | 下顎孔伝達麻酔など深部への刺入 |
| 30G | 約0.30mm | 浸潤麻酔の標準サイズ |
| 31G | 約0.28mm | 極細・汎用性が高い |
| 33G | 約0.26mm | 多くの歯科医院で採用される最細クラス |
| 35G | 約0.23mm | 2020年発売の最新極細針 |
採血で一般的に使われる22Gの外径は約0.70mmです。 歯科で使う30Gは0.30mmですから、採血針の半分以下の細さということになります。 つまり歯科麻酔針は医科と比べてもかなり特殊な細さといえます。
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ゲージ数が増えるほど針は細くなりますが、現在の歯科用ディスポーザブル針で選択できるのは25・27・30・31・33・35Gです。 25Gより太い針は歯科では通常使いません。これが原則です。
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「細い針ほど痛みが少ない」というのは基本的に正しい考え方です。 針が細ければ、歯肉にある痛点(痛みを感じる神経末端)に接触する確率が下がります。しかし、痛みは針の太さだけで決まるわけではありません。
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33Gと35Gの違いを数字で比較すると、穿通抵抗値(刺入時の抵抗を示す数値)は33Gが0.445N、35Gが0.375Nです。 約15%の低下ということです。外径は33Gが0.26mm、35Gが0.23mmで0.03mmの差です。 シャープペンシルの芯(0.5mm)と比較すると、33Gはその半分以下の細さです。
ただし重要な点があります。35Gは外径が細くなっても内径(薬液が通る管の直径)は33Gと同じ0.11mmです。 注入速度や圧力に変化はありません。これは使えそうな情報ですね。
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つまり、35Gにしても「麻酔液を素早く打てる」わけではなく、あくまで刺入時の痛みを軽減する効果に限られます。注入圧が高い状態で打てば、針を細くした効果が相殺されます。細さだけが条件ではありません。
歯科麻酔では部位によって適切なゲージが異なります。 すべての部位に同じ針を使うのは正しくありません。
主な部位別の使い分けは以下のとおりです。
35Gは針のたわみ量が0.08mmで、33Gの0.06mmより大きい点に注意が必要です。 たわみが大きいと深部への刺入や角度の保持が難しくなります。細さだけを追求して35Gを全部位に使うのは避けるべきです。
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一方で35Gの穿通抵抗値の低さは、表面麻酔を十分に行ったうえでの浸潤麻酔では大きなメリットになります。 刺入時の患者の反応が変わるため、術者の精神的な負担軽減にも寄与します。細さと用途の一致が条件です。
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ゲージ選択の議論で見落とされやすいのが、針のたわみが刺入精度に与える影響です。これは独自視点ながら臨床上の重要なポイントです。
細い針(高ゲージ)は当然たわみやすく、刺入角度がズレると想定部位に薬液が届かないリスクがあります。35GはSサイズ(ショート)でのみ実用的とされており、長さのあるロング(L)サイズでの使用は制限されます。 ロングサイズを使う伝達麻酔では27〜30Gが基本です。
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また、再刺入(一度使った針で再度刺す行為)は禁止されています。使用後の針先は肉眼では見えないレベルで変形・鈍化しており、同じゲージでも刺入抵抗が大幅に増加します。再刺入は痛みのリスクを高めます。
痛みの原因を「針が太いから」と安易に結論づける前に、刺入テクニック・刺入速度・針の使い回しの有無を確認することが先決です。これが原則です。
細い針を使っていても、表面麻酔の塗布時間が短い(目安30秒〜1分以上)と痛みは出ます。 針のゲージを変えるだけでなく、プロトコル全体で痛みを管理する視点が必要です。
関連)https://keyaki-mbdc.jp/diary-blog/15519
以下のリンクでは、35G針の穿通抵抗や内径データについて詳細な数値が記載されています。
注射針の太さ(35G vs 33G の数値比較)|神谷歯科医院
歯科恐怖症の患者の多くが「注射が怖い」と答えるというデータがあります。麻酔針のゲージ選択は、単なる臨床判断にとどまらず、患者の来院継続率にも影響します。
「痛くなかった」という体験が一度でもあると、次回の来院ハードルが下がります。35G針の導入を患者に明示している歯科医院では、「他院より痛くなかった」というレビューが増える傾向があります。 逆に細い針を使っていても、注入速度が早くて痛みが出ると「痛かった」という評価になります。厳しいところですね。
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電動注射器(アネジェクトII等)と極細針の組み合わせが有効です。 電動注射器は注入速度・圧力を一定に制御できるため、細い針の効果を最大限引き出せます。手動注入での35G使用は、術者の技量によって結果がばらつく可能性があります。
関連)https://sasajima-dent.com/treatment/index-1.html
ゲージ選択+電動注射器の組み合わせが推奨です。どちらか一方だけでは効果が限定的です。患者への説明として「〇〇Gの極細針を使用しています」と院内で明示することで、麻酔への不安を和らげる心理的効果もあります。 痛み管理は技術と説明の両輪です。
関連)https://kirarashika.com/top/dental-menu/general-dentistry/painless
歯科用注射針の選択について、権威ある製品情報・解説は以下のリンクも参考になります。
注射針30G・32G・34Gの違いと選び方|医療メーカー解説(リタハート)